映画

『野菊の墓』を観た。松田聖子主演・澤井信一郎監督の第一作の映画です。松田聖子は映画初出演で、主人公を演じる相手役もオーディションで選ばれた新人ということで当時はその演技が話題になったらしい(私は当時10歳で観ていません)。

最初はその演技がどんなものか?という興味だけで観始めましたが、脇の役者さんの演技が主人公二人の演技力不足を補っていて観ていられる映画です。東映の映画俳優ではない文学座や俳優座の加藤治子や樹木希林、赤座美代子に村井国夫の演技に引き込まれました。でももっとグイグイ引き込まれてしまったのは映像の美しさです。近代化される前の日本の風景の描写が本当に美しい。山々や川、畑といった自然と、主人公が住む商家や軍人の家の佇まい。夕日や 丘の上から見た夜の集落の明かり、門に取り付けられた提灯、夜道を行くシルエットといった時を描く。撮影は1980年ということですが、その時にでもこんな風景を撮影するのは難しかったと思うので、ロケハンに日本中回ったのではないでしょうか。

本音を言うと相当舐めてました。『アイドル映画』と自分勝手に括ってしまってました。観る機会もなかなか無いですが長い間観ずにいたことを後悔させる、そんな映画でした。

映画

『カサブランカ』を観た。ハンフリー・ボガートの“リック”が イングリッド・バーグマンの “イルザ”と再会したがために、後悔したり未練たらしかったり悩んだりしていつものハンフリー・ボガートらしくない。軍人や警察署長、自分の店の客に見せるハッタリと駆け引きができる粋な格好いい男のほうが彼らしい感じなのでこの対比を演じているのは珍しいような気がする。

リック

カサブランカはフランスからアメリカへの亡命する人々の経由地ということで中立地帯になっている。ドイツ軍人もフランスのレジスタンスの指導者も商売人もフランス人警察署長に亡命者、イタリア軍人など多彩な人物がリックの店に集まってくるのだけど、そんな混沌としている中でも登場人物をキチンと描き分けて、どの人もとてもいい。なかでもリックと運命を共にしてきたピアニストのサム(ドーリー・ウィルソン)とカサブランカのフランス人警察署長(クロード・レインズ)がとってもいい役だ。

サム

しかしハンフリー・ボガートのラブシーンってどうなんだ?ほかの映画でもあまり見たことがないぞ。ケーリー・グラントとかならラブシーンが様になっていると思うけれどリック役はハンフリー・ボガート以外考えられない。でも話の筋から欠かせないとはいえ違和感があるなあ。これより先に見たのが『マルタの鷹』や『三つ数えろ』とか『黄金』とかだったせいなのか。

最初に出てくるアフリカの地図や地球儀パリからカサブランカまでの移動経路のアニメーション、カサブランカの遠景の書割り、パリの背景や飛行機の場面などのスクリーンプロセス、カサブランカの街のセットなど映画を形作る技術が好きだ。

話の筋といえば主人公が酒場のオーナーというのが、みんなが集まってくる場所としてとても都合がいい。ほとんどの場面がお店なんだけれどもこの店にリックは住んでいるようだから閉店後でも話が進行できてしまう。軍が使うサーチライトやお店のスポットライトそれにリックの部屋の月光と光の演出もうまい。ちょくちょく昼間の場面が挟まれるがほとんどの場面がリックの店で夜の開店時間というくらいこの『カサブランカ』は夜の映画である。