古い機材の話 その4

2019年4月19日

映像機器が映像制作の世界に起こした革命は大きく二つあります。
一つはSONYのハンディカムで、『ビデオカメラの小型化』です。
ただし初期のハンディカムはアナログの8mmビデオで、放送・業務用では使用するのには画質と見た目で不向きでした。
その後、1994年にテープはデジタル化し高画質化したDVテープが登場します。
このDVテープの登場によって映像制作の世界にも、長い長いアナログ時代を経てついにデジタルの時代になります。
さらに1998年頃になると、SONYはDVCAMというDVテープを業務規格にしたデジタルテープを発売します。
規格としてはDVテープと同じサイズで60分撮れるミニテープと、現在のスマホくらいのサイズのテープで174分撮れるラージテープになります。
ちなみにこの頃ライバルのpanasonicはDVCPROという規格でDVテープを業務規格にしたデジタルテープで対抗していました。
SONYは家庭用DVカメラの発売と同時に、それより大型のレンズとボディを持ったハイアマチュア用のVX1000を発売。
このカメラの登場は映像制作の様々な事を変えていくことになります。
まずロケ撮影に持っていく荷物が減ったこと。
当時ロケ撮影は重いショルダーカメラで扱う機材が多く、人も多く必要でした。それを小型カメラにすることで人や機材が少なくても撮影できることにしてしまったんです。
ちょっと大きめのカバンにマイクからなにから全部入ります。
このことはバブル崩壊後の不況の世の中に状況にマッチして、これまで分業だったはずのディレクターとカメラマンの仕事が、ディレクター1人でこなせるようになってしまいます。
同時にテレビのロケ現場から、予算の都合やさまざまな理由でプロカメラマンや音声マンといった技術スタッフがどんどん減っていきます。
このころテレビ局の自社スタッフは放送技術が中心で、撮影などの技術スタッフは外部の制作プロダクションが行っていました。
タレントさんとディレクター兼カメラマンの二人で、日本の各地や世界中を旅する番組がこのカメラによって爆発的に増えました。
この人員削減の影響で多くのテレビ制作プロダクションが無くなったり、業態変換を余儀なくされます。
この流れは2019年現在にも続いていて、テレビやロケという概念をこのカメラが変えたと言ってもいいと思います。
その後2000年にはVX1000に液晶モニターが付いたVX2000と、その業務用PD-150が登場します。
これまで業務用カメラはファインダーを覗く、つまり片目で見るものでしたが、『両目』で液晶モニターを見ながら撮影するというスタイルが定着します。

この『液晶モニターを見ながら撮影する』スタイルは、1992年にシャープが発表した家庭用ビデオカメラ『液晶ビューカム』が最初で、ビデオカメラのもう一つの革命でこれ以降液晶のつかないカメラは無いと言ってもいいほど定着し、写真のカメラにも波及していきます。
当時、両手で本体を持って両目で見る撮影スタイルを各地の運動会や発表会など様々なところで見かけました。
この液晶モニターを備えた最初の小型の業務用カメラPD-150は、徒弟制度的なカメラマンの世界でも、カメラマンとして教育を受けていない人が活躍できるようになった初めてのカメラといってもいいと思っています。
この後肩にのせるスタイルしかなかったカメラも、片手で撮れるハンディカメラというスタイルに変わっていくことになります。

さて話は私が所属していた会社の話に戻りますが、ベーカムを6年ほど使用した後、会社にもDVCAMカメラ『DSR-300』と『DSR-500』というショルダーの一体型カメラが導入されます。
この174分のラージテープでも60分のminiテープでも両方使えるカメラを仕事に応じてテープを割り振って使っていました。
ワンカットごとの商品撮りや、1シーンごと撮るような仕事はDVCAMminiテープで。
講演会やイベントなどの記録はDVCAMラージテープという具合です。
私としては一本で長時間の記録撮影が可能になるのと、デジタルテープの強みとしてコピーしても画質が劣化しないというのに驚きました。
そしてなんといってもカメラが軽い!この一点につきます。
職業病の慢性肩こりも軽減できると期待したのをよく覚えています。
ただ前述したような液晶モニターは無く、ファインダーを覗く毎日を続けていくことになります。
DSR-300とDSR-500はDSR-500のほうが上位機種で画質が良く、企業PVは常にこちらを使用していました。
一眼レフカメラのようにレンズを取り換えられるので、取り外して小さくしたうえで飛行機の機内持ち込みにして岩手県や佐賀県へ出張したものでした。
SONYのショルダーカメラは、DVテープに向かわずにベーカムをデジタル化していった放送用の『デジタルベ―タカム』と、業務用の『DVCAM』に住み分けができていきます。
会社ではやっと世の流れに乗ってPD-150も導入されました。
初めてのハンディカメラです。

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撮影

Posted by myrte